人間の体には体全体のツボや神経の出先機関のような場所が3か所あります。足の裏、手のひら、そして耳です。特に耳は神経の大元である脳神経が集中した出先機関です。そしてそのことに注目し研究したのがフランスのポール・ノジェ博士です。その研究成果を耳鍼(じしん)治療として確立しました。例えば体の冷えは耳を揉んで温かくすることで改善する、というような効果です。そして脳神経の出先機関ですから、耳を刺激することで眠りにも様々な効果が期待できるのです。
不眠の大きな原因の一つは、ストレス性のものです。この神経が高ぶったり興奮する形で顕れるストレスは、体の活動を高める交感神経という自律神経に影響されています。ですからこの自律神経の興奮を抑えてあげられれば、眠ることが楽になるはずです。それには耳を揉んで温めるだけでも効果があります。
もう少し詳しく言うと、耳を上下に3等分すると、およそ上部が手足などの末端部、真ん中が内臓、下部の耳たぶが頭にあたります。何か専門的な鍼灸の知識が必要と思いがちですが、指先で揉んだり押さえたりすることでも、鍼灸と同じような効果が得られます。不眠に効果的な耳にある鍼灸のツボは「心(しん)」「交感」「神門」「頸椎」「不眠」の5か所です。この5か所をぎゅっと適度な強さで揉むと、不眠の方はおそらく痛みを感じるはずです。改善されれば痛みはあまり感じなくなります。ポイントは耳がポカポカ温かくなるまで揉むことです。